題名未定1(ひまわり系シリーズ)




「愛がない」
 ――来るべき時が来てしまった。
 驚きはなかった。驚きよりも諦めや、一種安心感に近いものを感じはしたが。やはり私が好きだったのは彼自身ではなかったのだ、という確認をしてしまっただけ。
「なんていうか……」
 躊躇を感じさせる声音だった。
 間を持たせるように、ジッポを開く金属音。葉の燃える極々小さな音と共に、少しして煙草の香りが鼻に届いてくる。彼との見えない距離が、更に開くのを感じる。
「……いや……」
 彼の言わんとしているところが分かるが、自分でそれを口に出すのは、正にそうであるかのようで心苦しい。いや、実際そうなのだが。先ほどの一言で現実に引き戻されたのか、急に肌寒さを感じて、私はシーツを引き寄せた。また彼との溝が大きくなった。
「うーん……」 
 まだいいあぐねている。少し下を向いて、しばらく彼の言葉を待つ。
 早く服を着て、この気まずい空間から離れたい。
 その思いが彼によって実現されなさそうだと判断し、口を開いたその時、
「なんていうか……体目当て?」
 意外とすっぱりと出た、正解の一言。
「いや――」
「うん。そう」
 彼のフォローを遮って、素直に認める。吐いてしまった方が楽になれる気がした。いつもの場所にある自分の煙草とジッポを取り、着火する。大きく息を吸って、煙を吐き出す。落ち着く一呼吸。自嘲気味に鼻で笑う癖が出てしまい、肺に残った煙の一部が鼻を通って嫌なにおいを残した。
 私が煙を吐き出すのを待って、彼が口を開く。
「だって、なんか、お前としてても、全然……」
「知ってる」
「何が?」
 非難めいた、やや強い語調。
 ここからは、誤解を解きほぐす仕事だ。大丈夫、この人は分かってくれるハズ。
「してる気がしないって事」
 当たり前だ。私は愛情の交流やら、相互の愛撫を求めてはいなかったのだから。
「……うん」
「マッサージの延長みたいだった?」
「いや、さすがに……いや。そんな感じだったかも」
 げんなりした様子で言い直し、隣に座った彼はベッドに倒れこんだ。スプリングの反動が体をゆらす。その反動も、私たちの別れ話をリラックスした雰囲気にさせるとは思えなかったが。
「ごめん」
 私の意図に反して、彼は意外と楽な心持になっているらしかった。ため息のように長く深く、煙を吐き出す音が聞こえる。二人の煙が部屋の中で渦を巻いているだろうと想像すると、少し気分が楽になる。吐き出した煙でなら、私は彼と交じり合える。
 だが、例えそうであったとしても。
「俺には何の期待もされてなかったもんなあ。心がないっつうか」
「ごめん……」
 謝ったところでどうなるわけでもないのは分かっていても、こう答える他ない。数ヶ月の付き合いであったが、彼が私に好意を持ってくれていたのは知っていた。
 行為を重ねるうちに、私の目的が彼の身体――心や社会的な地位、性的な技量などですらなく――であると気付き、落胆していくのにも気付いていた。
「でも、好きだったの」
「そう言われても……」
 今度の息の音は、完全にため息であると分かる。こんな時ですら――いや、こんな時だからこそ、なのだ――私は彼の鍛え上げられた柔らかい筋肉や程よく付いた脂肪、私好みの骨格を想像し、それに触れたいと感じてしまう。すらりとした胸が膨らみ、喉を通じて空気が行き来する。それを想像するに――やはり、悲劇のヒロイン願望を抜きにして客観的に見たとしても、かなり酷い部類の人間であると思う。雑念を紫煙に任せて吹き払った。どうしようもない人間だ。
「ちょっと訊いていい?」
 彼は身体を起こして問いかける。
「俺の身体のどこがよかったの?」
「どこ、って……」
 ほんの数秒、考え込む。だが、意外にもすぐには答えは出てこなかった。彼の身体はパーフェクトに私好みだったのだ。どこそこの部位の感触やボリューム感、そういった点について言及してもいいが、それは彼の全体の評価ではない。私が彼の身体になれれば、抱きついてこの素晴らしさを伝えられるのに。人は自分自身の身体を感じる事は出来ない。どう伝えればいいというのか。
 身を包んだシーツを跳ね飛ばして振り向き、少し身を乗り出した彼の胸に手を当て、私は男を押し倒した。スプリングが二人分の体重を受けて、ベッドが弾む。私の垂れた髪が顔にかかって、彼は鬱陶しいかもしれない。いや、くわえた煙草が髪を燃やさないか心配するべきか。
 衝動的に押し倒し、次の行動と発言を考える私に、彼の冷たく疲れた一言が突き刺さった。
「どいて」
 ああ、これ位は想定しておくべきだろうに。
「触らないでくれ。好きでもないくせに」
 二人分の煙が目に染みる。煙のように、何も考えずに絡み合えればいいのに。相手も自分もなく、溶け合えれば幸せなのに。作者コメントみたいなモノ。
posted by みもん at 00:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月14日

一週間に一度くらいは。

書こうと思うンデス。日記。曜日は決めマセンガ(ホラ、一度破るとそのままズルズル引退コースジャナイカ、性格的に)

最近、電車待ちの時間トカ、時間の空いた隙にネタを考えるンデスヨ。
その場では結構よさげなのが出来るんで、頭の隅に置いておこうと考えるのデスガ。ガ。忘れてしまいマス。

ヤハリメモっとくしかナイのデスネェ。大体登場人物は固まってきたのデスガ。……性別くらいは。
執筆自体は勢いでやるモンじゃない気がしているのデスガ、ネタとか骨格は勢いに任せて作ってしまった方が良いものが出来るような気がシタリ。調整をじっくりヤルトカネ。

次の次かその次位の更新では、多分ネタがアップできるのではないかと思いマス。
posted by みもん at 01:31| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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